0

とある街にて

 超未来カグラ。

世界最先端の科学技術を持つ、超巨大都市。
地方からの若者の著しい人口流入のおかげで人口は現在億を超えるともいわれており、その経済はめまぐるしく上昇を続けている。無尽蔵なポテンシャルを持つ怪物都市、との異名も。
街を貫く高速交通網。天を貫かんと聳え立つ巨大ビル群。あちらこちらに人ならざる無機質な体を持つ者――自立型AI搭載ロボットの姿。道の脇にはホログラムの掲示板。眺める人の眼鏡には、AR機能が搭載されている。道行く人々の表情は明るく、そこには塵の一つさえ落ちていない清潔感のある街並み。どの店にも活気があり、働く人の目には未来への希望と憧れで満ちている。
まさに世界第一位の経済力と推進力を誇る、”怪物都市”だ。


――だった。15年前までは。


超未来カグラはただ唐突に、その世界一位の玉座から引き下ろされた。
それは超未来カグラの科学力が落ちたわけでも、他国の勢いが上回ったわけでもない。
争っていた相手がいなくなってしまったのだ。彼らの世界から。
いや、超未来カグラだけがいなくなったというべきか。
15年前のある日、超未来カグラは謎の違和感に包まれた。いつもとは空気が違うような、天がいつもより青く高く見え、都市外周部から吹く風は変に荒んでいる、ボタンを一つ、いや、その半分を掛け違えたような、妙な違和感。まるでもともとここにはいなかったような、世界に自分たちだけしかいないような、不思議な孤独感。
誰もが不安そうな顔で空を見上げ、何が起こっているのかを知りたがった。
小さな女の子が、不安がる小さな手を母親の手に隠す。
抜けるような快晴が、逆に気味悪く感じられた。


―――――
世界観の説明回なります。次回で終わる予定。
舞台は巨大都市、超未来カグラ。どのような環境で白鞘君と八式先輩がこの世界を生きているのか。興味がある方は是非。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。