カランコロン……、とドアベルが鳴る。
木製の扉を開けたのは一人の高校生。
入り口から差す夕日の逆光のせいでその顔は伺えないが、彼を待っていたカウンター席の客は、すぐにその人物が自分の待ち人であることを知れたようだ。にっこりとほほ笑んで彼を呼ぶ。
「白鞘、こっちこっち」
白鞘と呼ばれた高校生は彼を呼ぶ声の主を見つけると、彼女がいるカウンター席に向かって一直線に歩いていった。客はもともと彼女しかいなかったので迷いようはない。
白鞘はその客の隣のカウンターに腰掛けた。
「どれくらい前に着いてたんですか、八式先輩」
八式というらしい名前の客は一瞬時計を見て「10分くらい前かな」と答える。どうやら二人は待ち合わせをしていたらしい。八式の手元には湯気が立つ珈琲がある。
「白鞘はここまでのんびり歩いてきたの?レディを待たせて」
「本物のレディは自分のこと、レディなんて言いませんよ。それにたかが10分じゃないですか。誤差ですよ、誤差」
「まあ、白鞘は鈍足だから仕方がないか」
「……一概に否定できないのがまた悔しいですが」
体力テスト時の白鞘の50m自己ベストは9秒前半である。
「たかが10分程度を遅刻扱いにするのは流石に酷だと思うが」
店の奥からひとり、顔を覗かせるものがいる。
黒のエプロンを身に着けたその人物はこちらに歩み寄ってきた。
「そういうとこだぞ。八式」
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設定書くの飽きたので本編書き始めます。世界線は作中で追々説明を追加する予定です。
人物紹介を一つ。
律響院美澄……ボクっ娘。髪の毛はショート。