「二人とも。魔法って知ってる? 」
唐突な八式の問いに、美澄と白鞘は思わず顔を見合わせた。当然のことを聞かないでくれ、とでも言いたそうな。
「知ってるも何も、あんなに騒がれてましたからね。子供の耳にだっていやでも入ってきますよ」
「もう十何年も前の話だろ。それがどうかしたのか」
十五年前、この超未来カグラが丸ごと異世界にお引越しした際、狂暴なモンスターとともに発見されたのが”魔法”だった。というより、新たなエネルギー体が発見されて、それが物理法則に従っていなかったことから、未知の法則という意味を込めて”魔法”という言葉を仮付けしただけに過ぎない。この”魔法”は、しかし数多のファンタジー作品に出てくるようなカッコイイ代物ではなく、むしろ非常に地味であった。そのエネルギー体(公式で”魔力”と命名された)は未だ完全解明からは程遠く、分かっていることと言えば、魔力が物質に蓄積されること、その量はかなり微量なこと、物から取り出された魔力は火や水などに変換しないと霧散してしまうこと、そして魔力対のエネルギー効率が非常に悪いなど、あまり未来に明るい内容とは言えなかった。因みに絶望的なまでに攻撃力がない。魔力で生み出された炎はろうそくの火といい勝負になる。
「その魔法の話なんだけどね、実はとある高校の生徒で、見たって子がいるのよ」
「見た?何を? 」
八式先輩はそれっぽく前置きして、それから若干もったいぶるように言葉をつないだ。
白鞘が珈琲だったものを啜る。
「それはその子が街を歩いていた時の話よ」
ベタな展開から始まるものだ。八式は口の端を吊り上げて楽しそうに言葉をつづけた。
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気付いたのですが、八式と白鞘は苗字なのに美澄だけ名前でした。作中で美澄は名前を嫌っているようなので完全に皮肉ってますね。面白いのでこのままにします。
すいません、題名間違えました。
正しくは「とある街にて 6」です。
6です。
あと八式先輩の名前、八式永里でした。英じゃなかった。
見返してみたら1から間違ってました。