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とある街にて 10

東の空に一番星が輝き始めた頃。
八式が持ってきた噂話の話題はすっかり移り、ただの雑談と化していた。
誰もいない店内に三人の笑い声が響く。
「……。あれ、もうこんな時間だ」
美澄が壁掛け時計に目をやる。
「あ、本当。そろそろ帰らなきゃ。美澄はもう少し店番? 」
「さぼりすぎだよな。うちの親。自分の店なのに、もう少し責任を持ってほしいよ」
「とかいって。誰も来ないのに給料もらえて、おいしいとか思ってるんでしょ」
八式は笑いながら帰り支度を始めた。

……………

「それじゃ帰りますか。いくよ、白鞘」
この店に八式先輩とくるときは、決まって八式先輩と帰ることになっている。帰り道が途中まで同じのためである。
「ではまた、律先輩。さようなら」
「じゃあね。美澄」
「おう。二人とも気を付けてな」律先輩は黒エプロンに手を突っ込んで見送る。
からんころん。入ってきた時と同じ音を聞きながら、僕たちは店を後にした。

店を出たあと、僕と八式先輩は並んで歩いていた。街はすっかり暗くなり、いたる所にある電灯が地面を照らす。
超未来カグラはいくつかに区分けされていて、ここ径街レトロは中心区の朱都シントーキョーに比べ幾分落ち着いた雰囲気の街である。シントーキョーが最先端であるとしたら、レトロはその名の通り一昔前の街並みを保っている。
都会の喧騒とは離れたのんびりとした街が、夜の帳に身を潜めていく。
「それでさ、白鞘」
八式先輩がこちらを見ながら話しかけてきた。前、向いて歩いてね。
「私の話、本当だと思う? 」
「期限切れの牛乳飲んだら腹下したってやつですか? 」
「そっちじゃない」
剣呑な目つきで睨んでくる。
「……魔女の件なら、先輩がそういうなら本当なんじゃないですか」

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