ガチャッ、バタン!!!
「おはようございますッ!!!」
「全くお早くねえわッ、何しとったんじゃ貴様ァ!!!」
「すっすいません!!!」
「このクソ忙しい日に寝坊たぁいい度胸だ、それなりの覚悟あるんだろうなあ!!!」
「すいません、ガルタさん!!!」
「もういいからさっさと着替えんか!」
[ガルタのパン屋]はいつも賑やかだ。ダルケニアにあったパン屋はみんなおおらかでふくよかでなんか、こう、フワッとしたパン屋特有の香りがあったのだが、ガルタはそれとは全く違った。ゴリッゴリのムッキムキなのである。短く刈り上げたごま塩の髪、そのガタイには全く似合わないエプロンをつけて、アーネストや他の店員に始終怒号を飛ばしている。
なんでそんなパン屋で働いているのかというと、ガルタのパンは、それはそれは美味しいのだ。歯で弾けるようなバゲット、口の中でほどけていくクロワッサン、あり得ないほど甘いバターロール。
別にアーネストはパン屋になりたいわけでもなんでもないのだが、なぜかここで働きたい!と思えたのだった。
「オーブン止まったぞ、さっさと開けんか!!!」
「なんだその切り方は、肉でも切ってるつもりか!向かいの肉屋にでも行ってこい!!!」
「とろとろしてんじゃねえよこのノロマ!!!」
「そんなんはいいから手を動かせ手を!!!」
「アーネスト!!!」
とはいっても、思った通りではあるが相当に厳しかった。なんでこんなことやってんだろ、といいたくなるときもあったが、それが妙に楽しくもあった。別にマゾヒストではない。