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スターチス

私は写真があまり得意じゃない。
何かっていうと携帯のカメラモードを起動する近年蔓延っている行為に辟易しているのも要因の一つかもしれないが、元々苦手だった。
何故と問われても、むしろ何故そんなに撮りたいのかが理解できなかった。

彼はそれを知っていた。彼自身そういうのに無頓着だったせいか、一緒にいるときはそもそも携帯を取り出すことがなかった。だから、時として数年、“思い出”として残している写真は一枚もない。

彼と最後に会ったのは半年前。お互い地元を離れ、すぐ会いに行けるような距離じゃない。
髪を切ったの。その私の言葉に、初めてこんなことを言った。
たまには写真でも送ってみて。切った髪、見たい。
期待せず笑うから、期待通り送らなかった。
私が写真苦手なの、知ってるくせに。なんて笑う私は、あまのじゃくかしら。

写真がなくても、思い出も記憶も途絶えはしないし、心が変わることもない。
今でも写真は苦手だ。けれど、たまにびっくりさせるのは悪くないかもしれない。そう、思った。



スターチスの花言葉
『変わらぬ心』『途絶えぬ記憶』

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