思い出を数えるたび 素足が冷えてゆく 他人事みたいな地面を踏みしめる 捨ててきたものは忘れた 忘れたよ 振り返ることができないまま まだ温度の残る空の珈琲缶を手放す 紺色の波に光が滲んで きみも ぼくも きっと溶けだした 夜は魔物だ やさしい魔物だ 遠い日の約束を食らいつくして おとなになれなかった心が 立方体の部屋の隅にうずくまる 夢をみることは忘れた 忘れたんだ