八月も下旬の熱帯夜。
うっかり「あったか~い」の缶コーヒーを買ってしまった僕は、ぶつぶつと自分の右手を呪い、
突然の点滅と警報。
ビクリと体を震わせた。最近の防犯設備は本当に防犯になっているのだろうか。
2進数の世界。
0と1だけの単純な世界。
すべてが、明滅、点の集合で表される。
僕らはそこにある夢の世界を旅する。
16進数の世界。
0からFまでの複雑な世界。
僕らはそこに自らの名をつけたポリゴンという立方体の集合体を放り込む。
おそらく一生会うことはないであろう人たちと歓談を交わす。
10進数の世界。
僕らの故郷。
なのに僕らは逃げ出す。
見えないものを信じ、見えるものを疑った。
ちょうど誰彼構わずがなりたてる防犯装置のように、
誰彼構わず拒んで、
誰彼構わず憎んで、
誰彼構わず熱をあげる。
まるでそこにあるものが見えないように、
僕らは友とお喋りする。
常夜灯の下。
パタパタと蛾がはためく。
猫舌ゆえに、
プルトブを引いたまま口をつけていないコーヒーは、
なんだがいつもより甘ったるい香りがした。