君は櫻色の花弁を散らすように瞼を閉じ
呟くように歌を歌う
限りなく黒に近く染まった深緑は
群青色の空とおかしな距離感を保つ
薄い薄い夕闇に絡め取られた淡い硝子は
乾いた涼やかな音をひとつたてて
僕は身震いをする
何処かで烏が鳴いている
首輪に繋がれた犬は僕に吠える
ベビーカーの赤ん坊は泣きわめく
僕も一緒に泣いてみたかった
どうにも涙が出なかった
そんなに泣いたら涙がもったいないよ
そう言って笑ったあなた
なにもかもあなたのせいなのに
僕はどうにも
涙が出ない