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LOST MEMORIES ⅡCⅣⅩⅨ

瑛瑠は英人に顔を向け、冷ややかな視線を送る。
「言っておきますが、見てたのではなく見かけただけです。
生憎、クラスメートのデートを覗く悪趣味は持ち合わせておりません。語弊のある言い方はやめてください。」
嫉妬宣言に他ならない先程の言葉に、恥ずかしさを抑えられない。
悪態をつくと、妙に納得した様子の英人の顔がある。
瑛瑠は訝しげに彼を見る。
「確かに、瑛瑠の誘いを断ったのは、彼女との約束があったからだ。」
「……大切な人なのでしょう?それなら、私を送るなんて、勘違いさせるような真似はしない方がいいかと。」
瑛瑠に、冷静さが戻ってきた。
「確かに、彼女は僕にとっては大切な存在だ。
だが、瑛瑠だって大切だ。同じ天秤ではかれるものじゃない。」
「歌名の言うOTとやらがわからなかったのですが、あなたのことを見ていて、思わせ振りな態度の略なのだと、たった今理解しました。
私とあなたは共有者でしかありません。態度を改めてください。」
まだ言うか、このヴァンパイア。
相変わらず考えが平行線だと睨むけれど、英人も同じように睨んでいて。
「……ふざけるな。」
そう言うなり、信じられない力で腕を引っ張られる。痛い上に、力まで駄々漏れである。歌名がいなくてよかったなど考える余裕は、今の瑛瑠にはなかった。

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