『ーレンア国の王が消えたと聞いた。ただちに勇者たちに大切なものを持たせ、私のところへ向かわせてほしいー』
「わかったわ。ところであなたは今どこにいるの?」
『世界のどこかにある「私の隠れ家」だ』
もう夜が明ける。窓辺で朝日を浴びたレインド村の村長は、久しぶりに聞くある者の声を懐かしく感じていた。
「今日、旅立つんだね」
「ああ、もしかすると長旅になるかもな」
村長の家に行った帰りミウロは村の友達、レディバのレッグにつかまっていた。
「村長からのおつかいなんだっけ」
「うん。世界のどこかにある「私の隠れ家」に村の大切なものを届けにいくって言うおつかい」
「ずいぶんと無茶苦茶だよな。だけど君一人で?」
「らしいぞ。仲間がいたらなぁ」
「君が村長から勇者だって言われたのを聞いた時から不思議なんだけど、どうしてミウロが勇者だなんてわかるんだろう。
しかもじきにわかるだなんてさ。
まるで全てを知ってる人みたいだ」
「ううーん。そうなんだよな。村長って不思議な人だよ」
「あ、父ちゃんが呼んでる!またね、ミウロ!達者で!」
「レッグも達者で!」
そうしてレッグと別れたミウロは丘を登る道を進んだ。家に帰ったらさっそく旅の準備にとりかかる。それから大切なものを受け取りに村長の家に向かうのだ。
丘のてっぺんに着く。
丘を下る道の向こうの山の端には沈みかけの夕日が夜を迎えようとしていた。
その様子をじっと見ていると胸がざわついた。
「一体・・・」
何かがミウロの中で何かを訴えていた。