「紛らわしい言い方はよしてください……。」
恥ずかしさが限界値を超えた瑛瑠は縮こまるしかない。
そもそもデートという言葉を否定せず、さらに代名詞とはいえ彼女との約束なんて言うから、思考回路もそちらへ繋がってしまうのだ。
瑛瑠がそう言うと、英人はバツの悪そうな顔になる。
「あー……ジュリアとのやりとりがいつもそんな感じだったから、引っかからなかったんだな。」
そして瑛瑠は、チャールズとのやりとりを思い起こす。
彼ともし買い物に行くとしたら、デートに付き合ってとおかしく言うかもしれない。
そんな自分にため息が出る。少し考えればわかる事だ。
そしてもうひとつ。夢が、淡いものになっている。
10年前、彼女と顔を合わせているにも関わらず、気づくことが出来なかったのは瑛瑠の落ち度。
瑛瑠は、目の前にいる金色の髪を持つ彼女へ向き直る。
「挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません。
祝瑛瑠と申します。改めて、よろしくお願いします。」
たれ目がちな黒い眼を細めたジュリアは、抑揚のない声で、よろしく,とそう言った。