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LOST MEMORIES ⅡCⅤⅩⅨ

「私の話の前に、お嬢さまの涙の理由を教えていただけますか。」
静かに言うチャールズに、瑛瑠は困ったように微笑む。交換条件のつもりだったのだろうか。
きっと、「節度あるお付き合いを。」という発言について、瑛瑠が何かしら突っ込んでくると思っていたチャールズは、そこで帰宅が遅くなった理由や赤くなった目の理由を探るつもりだったが、違う話題を振られたために、いつも学校生活について突っ込まないからこそ、自分の話と引き換えに改めてその理由を引き出そうと言うのだろう。
しかし、どうして改めて。そんなに目が赤いのかと考え込む瑛瑠。それとも、
「……本当に、彼らと節度あるお付き合いをしていないとでも思っているの?」
そんな瑛瑠に、チャールズは一言。
「お嬢さまのわからず屋。」
まるで拗ねたような言い方に呆気に取られる。
「まあ、冗談ですが。」
「……冗談。」
「そんなことは思っていませんが、泣いた痕があるんですから、心配もするでしょう。なんせお嬢さまは、溢れるまで溜め込むしょうがない性格の持ち主ですからね。」
瑛瑠は思わず聞く。
「そんなに目赤くなっている?」
チャールズは微笑んだ。
「いつもと様子が違うことくらいわかりますよ、一番傍に居るんですから。」

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