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或る語り部のお話

季節は真冬。ある街でのお話。
路上を彷徨う物乞い少年。善人男に出くわした。そこで少年曰った。
助けておくれ、そこの旦那。寒くておいら、死んじまう。
そこで男は着ていたコートを差し出して、
お前にこれをくれてやる。コイツを着れば温(ぬく)かろう。
コートを着たが、震える少年。そいつが言うことには、
旦那のお陰で体は温(ぬく)い。しかし手と指まだ寒い。これじゃあ指が落ちちまう。
そこで男はコートを指差し、
そのポケットに手袋がある。そいつもくれてやりましょう。
手袋履いても寒がる少年。そいつがまたまた言うには、
こいつのお陰で手も温(ぬく)い。しかし今度は頭が寒い。おいらの耳がもげちまう。
そこで男はコートを指差し、
そのコートにはフードが付いてる。そいつを被れば良かろうに。
フードを被った少年は。図々しくもまだ言った。
旦那のお陰で体はぽかぽか。けれどおいらは孤児(みなしご)だ。心がとても寒いんだ。
最後に男はこう言った。


ごめん、流石にそれは無理。

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  • レスありがとう。
    確かに(笑)言われてから気づくって言う(笑)

    この語調の整った感じでお話が進んでいく感覚が大好きです。なんていうか、ナニガシさんはいっつもすげえって思わしてくれんだよなあ