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或る探偵たちの賭け事

私は私立探偵をやっている者だ。といっても、大抵はペット探しや不貞調査ばかりで、小説や漫画に出てくるような事件の捜査などはしたことがないが。
余り知名度も無いので、基本暇で、行きつけの喫茶店で同業の友人とだらだらしていることが多い。
今日もそうしていたのだが、突然友人がこんな提案をしてきた。
友人「推理勝負しようぜ!」
私「どんな風に?」
友人「ほら、窓の外にいるあの人が、何をしているのか当てるんだよ」
見てみると、なるほど確かに、若い女性が明らかにそわそわしながら立っている。誰かを待っているようだ。ファッションに疎い私にも、相当めかし込んでいるのが分かる。
友人「負けた方が会計持つってことで」
私「了解」
友人「俺から言うぞ。ありゃあ十中八九、待っているのは恋人だな。あんなにお洒落して、それ以外に考えられないね」
私「そうだな…。あれは多分、待ってるのは同性の友人だな。見たところ大学生ほどのようだが、学校が違うか何かで、中々会えないんだろう。それであんなにそわそわしてるんだ。相当親しいんではないかな?その友人とは」
結果は…友人が私に奢ることになった。
友人「なんで分かったんだ?あんな考え普通思い付かないぞ」
私「まさか適当に言った答えが当たってしまうとは」
友人「え…?」
私「何?」
友人「賭けをしてる場で、適当答えたっていうのか…?」
私「適当言った方が何故かよく当たるんだよ」
友人「理不尽だ…」

  • 「或る」「の」シリーズ
  • もはやシリーズと言っても過言ではない
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