暗い部屋、ベッドの上で、夕食の席でのことを思い起こす。
チャールズは、苦しげにジュリアの馬鹿と呟いた。その様子から、彼女が席を立った理由が分かったのだろうと察するも、あの感じでは教えてくれないだろうことも想像出来た。
馬鹿とは、何とまあ良くない言葉なのに、苦しげなその中に愛情を含んで放てるものなのだなと瑛瑠は思う。ジュリアも同様、嫌悪感や怒りのない、英人に言われたものとは種類の違う言葉に感じた。もっとも、英人言葉も罵倒よりかは非難の意が強かったけれど。
そして、チャールズが想像以上におかしげな学校生活を送っていたと知ることが出来た。
自分もいつか、冗談めかして、愛情をちゃんと含んだ、馬鹿なんて言葉を言えるようになるのだろうか。
思い浮かんだのは、今日瑛瑠を馬鹿だと諌めた彼。
そういえばと思い出す。掴まれた部分が赤くなっていた。力の差を感じたと共に、真実の言葉でないとはいえ彼を一瞬でも傷つけたのは事実で、その代償というにはあまりにも軽い。
彼が愛だと言ったその痕を、瑛瑠はそっとなぞる。
「本当に、いけない人……。」
そうして、眠りについた。