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LOST MEMORIES ⅢCⅢⅩⅥ

朝、というのは総じて忙しい時間のようだけれど、忙しない、喧しい、そんな言葉とは無縁そうなチャールズの作る朝は、やはりそんな言葉とは無縁になる訳で。
「ルイボスティーです、お嬢さま。」
「ありがとう。」
食後にしっかり紅茶まで味わう時間があるのだから驚異的である。
「ところでチャールズ、昨日は聞かないでおいたのだけれど、どうしてあんなことを呟いたの?」
こんな、長引くことが目に見える話を朝に振ることができるのも、時間がある証拠。
「あんなこと、とは?」
返しは予想通りだが、はぐらかされる訳にはいかない。まだ、ジュリアに逃げられた理由がわからないから。
引く様子のない瑛瑠を見て、チャールズは ふむ,と頷く。この目は、いつもの目だ、はぐらかす時の。
「では、お嬢さま、質問です。」
ほら。
「友人をひとり、思い浮かべてください。とりあえず、彼、としておきましょう。彼から、自分の命よりも大切なものだという宝石を、預かってくれと押し付けられた。それが奪われそうになり、他人の手によって傷つけられた。
それって、誰が悪いですか?」

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