自殺志願者(これ以降は志願者と略す):
唐突ですが、この世界に絶望しました。死にとうございます。
説得者:本当に唐突ですね。
志願者:自殺をすると地獄に堕ちるらしいのですよ。死んだ後も辛い思いするとか真っ平なので、どうか私を殺してください。
説得者:殺人罪はかなりの重罪なので嫌です。
志願者:じゃあ、自殺幇助あたりで何とか。
説得者:結局犯罪じゃねーか。
志願者:じゃあ、どうすれば良いのさ。
説得者:簡単だ。生きれば良い。人は生きればいつか死ぬ。
志願者:それが面倒くさいっつってんだよ。
説得者:そう言うなよ。小説だって、悪いことがあった章の次の章には良いことがあるだろ?
志願者:「赤いくつ」
説得者:命は助かるじゃん。
志願者:「とっぴんぱらりの風太郎」
説得者:良いことがある章もあっただろ。
志願者:「人間失格」
説得者:う……あ、あれは…例外だから……
志願者:良いか君、これは現実なんだよ。
説得者:そう言わずにさ、生きてれば良いことあるよ。
志願者:今のところ嫌なことばっかりだよ。
説得者:僕という友人が居るじゃないか。
志願者:君、良いやつだな。
説得者:と言う訳でさ、死ぬなんて剣呑なこと言うなよな。
志願者:だが断る。
説得者:ここで使っちゃ駄目だろ。
志願者:あ、そろそろ門限だから、今日のところは帰るわ。絶対に明日は殺してもらうぜ。
説得者:嫌だね。
志願者:サラバ。また明日。
説得者:……少なくとも明日までは生きている訳だな?
志願者:あ………
説得者:………
志願者:………
説得者:…まあ、何だ、じゃあな。
志願者:お、おう。