「? 何見てんの?」
「別になんでも?」
「ちょっ、見せろや」
「あーっあーっ、ちょっと~」
ホタルは俺からパッとスマホを取り上げると、メッセージアプリの履歴を眺め始めた。
「ふ~ん、なんもしてねぇのか」
「そう」
「さっきの感じからして、恋人とやり取りしているのかと」
「は⁉ そもそも、お前そういうのに興味あった⁇」
「ボクはそういうの興味ないし」
「…その一人称やめたら?」
「フン、やだね。これがボクなのだよ」
「やなかんじ」
変わらない掛け合い。特に一人称については昔から言い続けている。
ホタル、入間ホタル。おれの妹。生意気な小学5年生。
いつからか、自分のことを”ボク”と言っている。そういうの、俺は嫌なんですけど。
「でさ、フェスの件。どうすんの?」
「ああ」
実は決めかねているクリスマスの、”フェス”のこと、俺の周りで知っているのは、こいつ―ホタルだけだ。
こういう悩み事系は、優柔不断な弟のケイではなく、妹のホタルに言っている。
ホタルはこういう性格だから、悩み事は、アドバイスはくれないけれど―流し聞きしてくれている。
そういうのもあって、結構信頼してるんだけど。
「行くか行かないか、まだ迷ってる」
「そういうのは早く父さん母さんに言うといい」
「まぁそうだけど…」
「…行けば?」
ホタルがこっちを見ている。その釣り目が笑っている。
「…とりあえず、みんなに聞いてみよっかな」
「いんじゃね? ボクには異論を言う立場じゃない」
俺はホタルからスマホを取り返すと、みんなへの”言葉”を打ち始めた―
昨日に比べれば、短いかも。もしかしたら、ここはカギになる回かも?