傘を閉じ、マフラーに顔をうずめ、寒そうに白い息を吐いた瑛瑠を、チャールズは見やる。
雨だったはずの外は白く染まり、冬を実感させられる。蒸気させた頬の彼女は、雪が降ってよかったねと微笑みかける。その既視感に痛みを感じ、そうですねなんて当たり障りのない言葉を吐いた。
雪が降ってよかったねに起因するのは二人の目的地。煌めく光に彩られた夜を目の前に、隣の彼女は眩しそうに目を細めている。その横顔があまりに綺麗だから、思わず笑みが零れる。
チャールズは、ひとりの女性を思い描く。すれ違ったままはぐれてしまった言葉に想いを馳せるけれど、そんな想いはとうに記憶の彼方で。
歯痒かったこの気持ちを、友人は恋と言うけれど、残ったのは今も時々疼く傷だけ。
雪が振り、また彼女を見失う。彼女の影を探しても意味はない。
隣から自分の名前を呼ばれ、やっと浮上したチャールズは、瑛瑠の手をとる。
「行きましょう、お嬢さま。」
――彼女のことは、傷つけない。
PS》
瑛瑠ちゃんの頬は上気しているんです。
蒸気ではありません、すみません(--;)