「ねぇねぇ、冬休みってさ、何する?」
「え~もちろん受験勉強でしょ」
「だよね~」
「それ以外にあるの?」
「メインは受験勉強だよ」
「まぁそうだよね~」
ノエルは苦笑した。まぁ受験生だもんね、頑張らないと。
「でもさー、ノエルはすごいよね~。だって偏差値60超えてるんでしょ? やっぱすごいよ~」
「え~、これでも志望校にはまだまだだよ?」
それでもイチゴは、ノエルはすごいな、と思った。自分なんかと全然違う。自分なんか、まだ志望校だってあやふや…
ノエルこと、桐淵ノエル・ブッシュとは、塾で出会った。それもそのはず、2人は学校が違うから、普通出会うことはないのだ。
たまたま塾で隣の席だったのがきっかけで、2人は友達になったのだ。
ノエルはイチゴよりも頭がいい。だから、友達でもあるけど、ちょっとした憧れの存在でもあるのだ。
「あ、そうだ」
ふとイチゴは思い出したかのように、カバンから何かを引っ張り出した。
「?」
ノエルはそんなイチゴを、不思議そうに見ている。
「はいこれ、ノエルへのクリスマスプレゼント」
「え、え、え⁉ ホントに⁉」
ノエルは目を輝かせた。イチゴの手の中には、プレゼントボックス型のストラップがあった。
「冬期講習が始まってさ、会う機会減ると思うでしょ? だから今のうちに渡しておこうと思って」
「え、あ、ありがとうイチゴちゃん。めっちゃ大事にするねコレ」
ノエルが喜ぶ様子を見て、イチゴもうれしくなった。
「あ、あとさ」
「?今度は何?」
ノエルはイチゴの顔を覗き込んだ。
「今度さ…25日、ライブ行けるようになったんだ」
「え…あ、ホントに⁉」
ノエルは予想外の発言にちょっと後ずさった。
「いや、もういっそ言っちゃおうかって…パパやママに聞いたらあっさりOKしてくれて、そっちのほうがビックリしたんだけど」
「めっちゃ行きたいって言ってたけど…ホントよかったね。楽しんでね」
このライブの話はよくノエルや親友の藍瑠に話していた。だからこんな報告ができるのだ。
(行くことができるから、)
みんなに、また会える。約束通り、もう一度、もう一度―
空を見上げるイチゴの顔は、本当にすがすがしかった。