美月視点
時雨さんは言う。
「結月は多分、病気なんかじゃないんだよ。
あの日に戦わなかったら、結月はこんなことにはならなかったんだよ。」
どんどんその声は震えていく。
私はこう言った。
「ここから先は私が話します。」
「数年前のAIの暴走事件を知っていますか?」
玲さんはコクリと頷いた。そのまま私は続ける。
「あの事件で、特攻班は、処理に向かいました。
ですが、大半の班員は戦死し、残ったのは、
たった二人の班員でした。
それが——御影結月と中村時雨でした。
ですが、その片方は、人として、人間として生きる道を失ったのです。
たった1つの小さくて、薄っぺらい、機械のために。
その片方は、今の特攻班班長 御影結月だったというだけです。
つまり、結月姉は、病気なんかじゃなく、機械であり、人間である、存在なんです。
だから、あの人は自分一人で全てを抱えて、
余計なものまで全て背負って、生きているんです。
息をしているんです。」
私は、下を向いていたので、玲さんがどんな顔をしていたかはわからない。
【続く】