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死にたがりのお人形 第一弾

びゅーぅびゅーぅと、高層マンションの屋上には、風が吹いています。
日が暮れる頃、空が紫色になる頃―その屋上に人がたたずんでいます。
―都会の光は、綺麗ね―
その人はぼんやりと思いました。
(ここでなら、―)
「…おい」
その人に誰かが話しかけます。その人が振り向くと―
「…よぉ」
白い狐の仮面を被った少年が、ポツンと立っています。
「なんの御用かしら」
その人は尋ねます。
「―まさか、死ぬのか?」
唐突な質問に、その人は動じません。
「初対面にその物言いとは、随分と命知らずね」 
「別に? 俺もぶっちゃけ言うと、消えに来た」
狐の仮面がそう吐き捨てます。
「あらそう? 私は、ただ高いところが好きでここにいるの」
その人は言います。
「ふぅん」
尋ねる側は興味をなくしたよう。高いところが好きなその人は、会話が続かないのがつまらなく、不機嫌そうにこう尋ねます。
「あなた、なんていうの? 名前」
「フン、名乗りたくもない。名乗るとしたら霊狐(レイコ)とでもいうか?」
「…そうね。確かに、狐の仮面を被っているし」
霊狐の顔は見えませんが、何となく、にやりと笑ったのがわかりました。
「そういうお前は?」
「あなたが、実名を名乗らないなら、私はおあいこで、朱鷺(トキ)と名乗りましょう」
「ほう…」
霊狐は感嘆します。
「一つ聞きますが、あなたは人間ですよね」
「当たり前だ。仮面をつけているのは、ここで消えた後、すぐに身バレしたくないだけだ」
「あらまあ…」
「もう暗くなるぞ。帰れよ」
「あら、あなたは消えないのです?」
「お前と話したら、消える気が失せた。だから帰る」
霊狐はくるりと踵を返してエレベーターへ向かいます。
長い髪の少女朱鷺は、不思議な笑みを浮かべながら、霊狐のあとを追いました。

はい。フッと思いついた小説です。日常系のお話です。しばらく続きます。ちなみに彼らは本名を語りません。次回は…いつ書くか未定。忘れたころかも。今月・来月は、きっとない(笑)

  • 死にたがりのお人形
  • 次回はいつだろう?(きっとあるけど。)
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