凍てつく空に白く浮かべた吐息
指先刺すように細く針に変えたつらら
春日灯籠 緋色に灯しては
沫雪にちらつかせて 揺らめく夢現
刹那音にも成りきらぬ恋残し
ぽつり落とした紅椿
鮮やかに映える間もなく粉雪にじませ
せめて散り際ほんの少し華やかに
誰か気付いてあげて うもれる前に
咲かなければ散らぬものを
ひとたびに色付いてしまうのならば
玉響でさえ最期まで美しく染めていたいなんて
ひとにぎりに翔ばした花びら
爪紅染めた小指からめて 指切り拳万
嘘吐いたら針千本 そんな嘘を交わしては
指切った
いつまでもいつまでも壊さずに
夢見ておやすみ子猫ちゃん
どこか遠くで鴉が鳴いている
早くお帰りこの戸が開かぬうちに
ぜんぶ散りばめた灯籠の
そっと緋移し袖移し
恋蛍の如く最後に舞わせて
指先触れてはつららを流しましょう