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LOST MEMORIES ⅢCⅧⅩⅢ

「もちろんです。私も望さんのこと大好きですよ。」
一応注釈を入れると、ちゃんと考えた上での即答である。
今築くべき関係をお互いにわかっているつもりの問答、そう瑛瑠は捉えた。多少は望のからかいも含まれているだろうが、流すことでちゃんと受け止めていると伝えている。そしてそれを彼もわかっているから。
「明日、歌名と霧に自慢しよ。」
なんて。
望は視線だけちらっとこちらへよこした。
「でも、瑛瑠さんに独り占めされるなら本望なのだけど。」
以前別れたT路路を、今日はふたりで進む。
瑛瑠はどう返したものかなと一瞬思案し、結果。
「あいにく、束縛する趣味は持ち合わせていないんです。」
軽く笑った瑛瑠と望の距離に変動はない。
もちろん、距離を詰めるような返しもできた。しかし、それをしてしまって何かが変わってしまうのは怖くて。
望は大丈夫だよと呟き、瑛瑠の頭にぽんと手を置く。
「その返しで合ってるよ。大丈夫、今の関係を壊しやしない。」
まるで誓い立てるようなそれに、不意に揺り動かされたのは、きっと風が吹いたから。

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