僕は歩いている。
下を見て歩くのは癖だ。
歩く。歩く。
長らく歩いているはずだが
三歩しか歩いていないことに気が付いた。
なんだ。これだから嫌なんだよ。
と思っている間に
今度は百歩進んでいた。
僕の意に反して百三歩も歩いた。
酷くどうしようもなくため息を吐いた。
飴を取り出し、食べた。
甘かった。
くそ甘くて、少し酸っぱくて
それでもって空虚な味がした。
不味い。
顔をしかめ、噛み砕いた。
空虚な味の飴は、空虚な音を立てた。
吐き出す。
隣を通り過ぎた少女たちが
同じ飴を瓶に入れて大事そうに抱えていた。
下を向いて歩いた。
歩いて、歩いて、歩いた。
歩いても自分の足音など聞こえないので
いくらでも歩けそうだが
確実に疲労が溜まっている。
足を引きずりながら、歩いた。
喉が渇いたので水を飲んだ。
全部身体を通り抜けた。
喉の渇きは癒えなかった。
歩いた。足をとにかく動かした。
転んでも起き上がって歩いた。
倒れたら這ってでも歩いた。
嬉しい時も悲しい時も
息をするようにただひたすらに歩いた。
現在歩いた歩数、5864歩。
僕は歩くことしかできない。