遅刻した言い訳?聞いてくださるんですか。いつもなら、言い訳するんじゃないーって一喝なさるのに。え、いや、あの、いえいえいえ。是非聞いていただきたいです。
今朝は本当に不思議な朝でした。
いつもと同じ時間に起きました。何の変哲もない、同じように目覚ましのアラームを止め、トーストを焼いて、コーヒーで流し込んで家を出ました。駅までも同じ道を通り、いつも乗る電車に乗りました。そう、いつもと同じ。ただ、その電車は、なぜかいつもと何かが違っている気がしたんです。
異様な雰囲気でした。乗車してしばらくは何も感じなかったのですが、ふと気がつきました。乗客皆の視線が、ある一人の男に注がれていました。それは適度に込み合った車内で、すごく自然なことのようでした。
その男の相貌は、確かに目を惹くものでした。ざんばらな前髪の奥には、鋭い眼光が何もない虚空を睨み付け、浅黒い肌には、無精髭がまだらに生えていました。真っ黒なTシャツの肩にはフケが乗り、ボロボロのジーパンは所々黒く染まっていました。聞いているぶんにはそう目を惹くものでもないかもしれませんが、何故か不思議な雰囲気を漂わしていたのです、彼は。