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無題

窓の向こうのパレットはオレンジ色でいっばいで、奥の方は水彩絵の具で撫でたような薄い紫色に染まっている。
俺が来たときには窓は少し開いていて、入ってきた風がカーテンを緩く揺らしていた。
窓側一番奥の席――俺の席に、誰か座っている。きっと、またあいつだ。
「……おい。起きろ、ユイ。お前の席じゃねぇんだよ。」
予想通り、突っ伏して寝ていたのは幼馴染。一応呼びかけるが、起きる様子はない。
カーテンに受け流された風で揺れる髪。
「……んなマヌケ面晒してんじゃねぇよ。」
今ここに来たのが俺じゃなかったらどうすんだよ。……くそっ、考えたくもねぇ。
顔にかかった髪を掬って耳にかけると、ようやくちゃんと顔が見えた。
閉じたままの瞼をそっと撫でたりなんか、俺らしくない。
「……お前って、結構可愛いよな。」
思わずため息が出る。こんなこと、絶対こいつの前で言えねぇ。
そして、耳にかけた髪を戻そうとして気づく。
こいつ、顔赤くなってやがるっ……!!

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