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月の涙 3

「そんなわけで無理です。あ、従兄の圭一さん呼んだ……ら……」

圭一さんは父方の従兄であり現在大学に通っているため年齢的にも心強い。ひ弱な女子高生である私よりも安心して妹を任せられるわと楽観していたら、妹が瞳に涙を溜めていた。そろそろ溢れそうだ。
「姉ちゃんと……見にいきたい……」
目から涙がつうと頬を伝う。えっ何で、と思っているうちにますます涙があふれてきて嗚咽も混ざり始めた。唐突なことに頭が混乱しながらとりあえず妹を不明の理由から慰めようと声をかける。
「ごめん! 何がいけなかったのか分からないけど、とりあえずごめん! お姉ちゃん、何でもするから。ほら、泣き止んで? お願い」
「……ホントに?」
「え?」
「ホントに何でもしてくれるの?」
「……いや、それはその……」
妹の濡れた瞳が見る見るうちに輝き始める。妹が見せるこの手の顔には非常に弱い。ああ、これはもう降参するしかないな。
見事に妹にしてやられた感はあるが、妹は過去から現在に至るまで純真を貫いており、あれが決して嘘泣きだったという訳ではない。だからこそ前言撤回する隙など微塵もないのだが。私は仕方なく圭一さんを連れていくことを条件にその話を呑んだ。さよなら、読む予定だった十冊の本。
「分かった。まずそのアイス食え」
妹の手に握られていた棒アイスは半ば溶けていた。

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