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月の涙 7

 圭一さんの車に乗り込んだ私たちは、そのまま北の氷枯村方面へ向けて出発した。朝ごはんは途中コンビニで買う予定。妹は窓の外を見ながら早朝の閑散とした街の様子を見ているようだ。そのまなざしには楽しさと期待と、僅かな緊張が混ざっている気がした。
「どうしたの?」
私が妹に視線を送っていることに気付き、妹が尋ねてきた。私はいや別にと返すかどうか迷ったが、やがて
「……ちょっと緊張しているようだけど、大丈夫? 夜に疲れて眠くならないようにね」
「……ありがと」
妹はなぜかそっぽを向きながら応えた。心配されたのが癇に障ったのだろうか。窓の外を見つめる妹の表情は窺い知れない。
 その後私たち一行はコンビニに着くまで無言だった。

 妹はサンドイッチとジュース。圭一さんはパン数種類とコーヒー。私はおにぎりとお茶。それぞれの朝ご飯をコンビニで手に入れた私たちは車中でそれらを食べた。出発直後からの無言の時間とは一転、それぞれの近況を報告したり最近話題になっていることを喋ったりして楽しい食事となった。
「え、圭一さんって彼女いないんですか。意外です」
「そうなんだよ。なんでだか分かる? 中身が希薄そうなんだってさ」
「まあ、確かに」
「酷いな。そういう君は彼氏とかいないの? 高二でしょ?」
「私は……人付き合いとか苦手なので……」
「お姉ちゃんは美人さんだからお父さんが許さないの」
「へえ、そうなのか」
「違います」
……こんな感じで。
 お腹を満たした私たちは再び氷枯村方面に向けて出発した。途中までは高速道路を使って行くらしい。だんだんと熱気を帯びてきた街を抜けインターチェンジをくぐれば、いよいよ遠くへ旅に行く実感が湧きはじめた。本のことを気にしていた私も少しだけわくわくしてきたのは認めざるを得ないだろう。遠出するのは中学生の時の修学旅行以来だ。私の気持ちと同調するように、圭一さんの軽自動車はぐんぐんとスピードを上げて高速道路を駆け抜けていった。

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