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月の涙 9

 慌ててやってきた圭一さんが私に告げたのは、妹とはぐれてしまったということだった。トイレの前に立ってスマホをいじって待っていてもなかなか来ない。腹痛でも起こしたのかなと思って更に待っていると、遠くの方に妹の姿がちらりと見えたという。妹はすでにトイレを出ていて、SAの中を歩き回っていたのだ。すぐに妹の後を追ったが見失ってしまい、やむを得ず一度車の方に戻ってきたらしい。私は車にも戻ってきていない旨を告げると、圭一さんはらしくなく舌打ちを一つした。居ても立っても居られない、とでも言うかのように。
「妹に連絡はしたんですか?」
「何回も掛けているが繋がらないんだ。一応君の方からも掛けてみてくれ」
本に栞を挟んでしまい、スマホを取り出して電話を妹に繋げる。
「……繋がりません」
「不味いな」
如何せんここはサービスエリアだ。もし誘拐なんかでもされたら、車で連れ去られてそのまま高速道へ入られてしまう。そうなったらもう警察へ連絡するしかない。
「私は店舗とトイレを探します。圭一さんは駐車場をお願いします」
「分かった」
圭一さんが返事をすると同時に、私は車を飛び出すと、まずは店舗の方へ走って向かった。

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