例によって放課後。しかし今日いつもと違うのは、歌名も待ち組であるということ。望を待つ3人の間に会話はなく、しかし穏やかな時間が流れていた。
瑛瑠は本を読んでいた。肩まで下ろした髪はたまにこぼれ落ち、流れるようにそれを耳にかける。そして、ページをめくる。英人は瑛瑠のそんな様子を眺めていた。
伏し目がちな透き通った目、形の整ったつやめく唇。
また、ページをめくる。すると、優しい香りが鼻腔を擽る。
「……甘そうだな。」
思わず呟く。
瑛瑠が顔を上げ、視線をこちらへ向けたことで、自分の声が漏れていたことを悟った。
思考が停止してしまい、対応できない。歌名の視線が痛い。睨み殺されそうだ。
次の瞬間、瑛瑠はふわりと微笑んだ。
「なんだ、バレちゃっていたんですか。望さん来てから渡そうと思っていたのに。」
そう言って、可愛らしく包まれたひとつの小さな箱を取り出し、英人の机にことんと置く。
「甘そうに感じたのは、たぶんこのチョコレートの香りでしょう?こちらの文化に乗ってみました。英人さん、ハッピーバレンタイン。」
──そうか、今日はバレンタインデー。
同じように歌名からも渡された箱には、今挟めたかのような2つ折りのメモ。
“瑛瑠が鈍くてよかったね。今年は甘そうな瑛瑠が作った甘いチョコレートで我慢しなよ!”
今年は,なんてフレーズに友人の愛を感じ、甘いなと今度は苦笑してみせた。
嗚呼、やっぱり良いです。素晴らしいです。そしてカナちゃんのポジションの重要さをひしひしと感じるのです。
......うん、良いねえ...(語彙力)
めめんとさん》
嬉しいのです…英人くんが変態にならなくてよかった() それもこれも歌名ちゃんのお陰ですね。
番外編は瑛瑠目線をできるだけ避けるようにしているのだけれど、今回英人くん主体という初の試みでございました。
英人くんの目に映る瑛瑠ちゃんは、本当に愛されてるのね。