電車に揺られて、どれくらいの時間が経ったのだろうか。途中でうとうととし始め、少しの間だけ眠ってしまっていたようだ。目を覚ますとまだ電車はまだ動いていた。時おりがたんごとんという振動が伝わってくる。車窓から見る外の景色はだいぶ暗くなってきたようだが、今は夏本番であり日はまだまだ沈みそうになかった。やはり夜型の人間にこの旅行はだいぶ負荷がかかっていたらしい。私はうんと背伸びを一つすると一つ小さなあくびをした。寝たおかげで疲れは大方取れたようだ。隣を見ると、妹が圭一さんに寄りかかってすうすう寝息をたてている。圭一さんは私にやさしく微笑みかけると、人差し指を唇に持ってきた。妹のあどけない寝顔を守るように私はその意を了承し、それぎり電車に伝わる振動に静かに身を委ねていた。私はこの時間が永遠に続けばと思ったが、電車とは終点に向かう乗り物であり、やがて到着する旨のアナウンスが流れてきた。
「――……陽波、到着だよ」