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月の涙 13

 電車の中で寝てから妹は見るからに活気を取り戻していた。私はともかく小学六年生の妹にも大分疲れが蓄積されていたようで、今は下がった血圧を上げようとスーパーで買ったおやつに手を伸ばしながら街中をうろついているところだった。
「見つかったかい?」
「はい、一応」
私はスマホを片手に近くに本屋はないかを探していた。先ほどの電車に乗る前の町も田舎っぽいなとは思っていたが、この街はさらに鄙びていた。一瞬ここに本屋はあるのか心配になったが、地図アプリが何とか本屋の場所を見つけたようだった。現在は私が先導でその本屋に向かっている。
「何を買うんだ?」
「? 本ですよ?」
「……いや、君はまだ読んでいる本があっただろう」
「……ああー……っと」
確かに私が背負っている鞄の中にはまだ読みかけの本があった。しかし私にはある一つのたくらみというか、妹へのささやかなサプライズをしようと思ったのだ。
「……私が読む分ではないんです」
その言葉であらかた話の流れを読んだのか、圭一さんは分かった風な顔をしてそれ以上何も聞くことはなかった。心なしか少し楽しそうな顔をしている。圭一さんももとは男の子だけあって、”秘密”というのは魅力的なのだろうか。妹はそんな私たちのことなど意に介さず、見知らぬ街を興味深く見まわしていた。この様子だと妹には聞こえていなかったようで安心した。

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