「──夢。」
目を擦りながら、上半身だけ起こす瑛瑠。
今までと同じなら、この夢も瑛瑠の記憶の片鱗。
右手をくるくると裏表にしてみる。そして、小指をたて、きゅっと手を握る。
「約束……。」
例によって覚えのない光景だった。
目の前にいた女性は、指切りだと言った。約束だと。
「生きて、か。
この子って、誰だろう……あの女性は誰だったんだろう……。」
やけに目覚めもよく、ひとつのびてベッドから抜け出す。
カーテンを開けると、入ってくる日の光。眩しさに少し目を細め、夢をそっと仕舞う。
まだ誰かの温もりの残る右手を、左手でそっと包み込んだ。