「ん。」
「……はい?」
瑛瑠は久しぶりに、困惑しすぎて固まってしまったチャールズの微笑を見た。
差し出しているのは小指。この約束の交わし方を、チャールズは知っているのだろうか。
これは、そんな小さな好奇心の現れ。
すると、予想通り細くて長い小指が、瑛瑠のそれにきゅっと掴まる。
「何か約束ごとでも?」
薄い微笑みをたたえたチャールズは困ったように尋ねる。
やっぱり、知っているのか。
黙り込む瑛瑠を見つめているチャールズは、お嬢さま?と呼びかける。
瑛瑠は静かに言葉を落とす。
「私は、誰と約束したんだろう。」
何も言わないチャールズは、きっと瑛瑠がまた夢を見たということに気付いてはいるのだろう。
わかってはいたけれど、チャールズと指を絡めても、夢以上のことは思い出せない。
諦めて小指を離し、すっとチャールズの瞳を見つめる。
「チャールズ、おはよう。」
「あ、はい、おはようございます、お嬢さま。」