その本屋は唐突に現れた。
地図アプリ片手にここらへんかな、と少し周りを見渡してみたら、目の前にその本屋があった。突然現れたように感じたが、それは周りの寂れた街並みと完全に同化してたからであり、つまりは店舗が古めかしかった。この店やってるのかな、こんなところに目当ての本なんてあるのかなと思いながらも、「OPEN」の札はかかっているし私が欲しい本はまあまあ昔の本なので、一筋の希望は捨てないままに恐る恐るその店の扉を開いた。
「こんにちは~……」
薄暗い店内から返ってくる声はない。意を決して、今度は一歩ずつ踏み出す。後ろから妹と圭一さんが入ってくる心強さを胸に借りながら、私はそのままどんどん奥へと入っていった。
店内が薄暗いと思ったのは外が明るかったからで、目が慣れればある程度の明かりは確保されているようだった。かび臭い本のにおいがする。入り口から店舗の大きさは小さいと判断していたが、予想に反してかなりの奥行きがあった。もしかしたら本の数は私の町のちょっとした本屋より上回るかもしれない。明かりがともっているとはいえやはりどこか薄暗い店内は、まるで迷路のような構造になっていた。
「うわぁ……。なんだか不気味だよう」
妹が後ろでお化けでも探すような目つきで店内をぐるぐる見渡している。圭一さんはそんな妹を、児童書が置かれてあるコーナーに連れていってくれたようだ。私は安心して一人で迷路へと踏み込む。
私が例の本を探しながらさくさく歩を進めていると、突然知らない声が掛かった。
「……ちょっと、そこのお嬢さん――」