わたしに水と
少しばかりのパンをください
それだけが私を生かすのです
どうか、どうか
わたしのこの大きな”よくぼう”というものを
満たしてはくれませんか
生きるためなのです
あなたの手はパンを小さくちぎって
わたしに投げるだけでいい
ゆびを水で濡らして
わたしの唇を潤すだけでいいのです
わたしが生きるために望んだ
はるかに高く乾燥したよくぼうが
わたしのうちで眠ってしまう前に
叶えてやってはくれませんか
なにせわたしは
目の前に置かれた一銭の価値をも知らないのです
何の意味を持つのかを知らぬのです
生きるためには水とパンが必要なのです
本では腹も満たせません
鉛筆は一度も削られておりません
わたしにパンをください
わたしに水をください
この僅かなおカネと引き換えに……
もしあなたが恵んでくれたなら
わたしは生きるためのおカネで
ばらを買いましょう
パンの代わりにばらを
水の代わりにばらを
あなたとともに頂くのです
ばらの棘と花びらを食すのです
そのときわたしは本当に満たされる
わたしの胃はばらで溢れかえる
パンをください
水をください
少しで構いません
生きるためなのです
いまはばらを買うおカネもないのですから