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雨の中

「…」
日本の夏は結構雨が多い。地域によっては違うけど、最近は地域に限らず本当によく降る。俗にいう、『ゲリラ豪雨』ってやつである。
あいにく、今自分はゲリラ豪雨に遭っていた。残念ながら折りたたみの傘すらない。
家まではそれなりに距離がある。別に誰かの傘に入れてもらうことは最初から考えていない。―そもそも、そんな友達などいない。
だから濡れても構わない、と豪雨の中を歩いていた。
でもさすがに雨のせいで風邪をひくのは嫌だから、普段通らない公園を突っ切る近道ルートを歩いていた。
あたりはもう暗いけど、公園の街灯でわりと明るかったし、―これぐらい暗くても、十分あたりは見えるから、困らない。
こういう時ばかりは、こんな自分でよかったなとちょっとだけ笑えた。もちろん心の中で。
ただ夜目がきくんじゃない―暗くてもほぼ平気なのだ。でもこんなことができるのはこういう”人がいない”ところだけ。
そういうことを考えながらぼんやりと歩いていると、後方から人が走ってくる音が聞こえた。自分と同じように、傘を持っていないから濡れたくなくて走っているのだろう。
近付く足音を聞きながら、パーカーのフードを深くかぶりなおした。
足音が近づき自分を追い越す、そう思ったその時―
「―ほい」
不意に、後ろから呼び留められた。ちょっと振り向くと、そこには小柄な少女がいた。
「…」
少女は真顔で折りたたみの傘を突き出している。
「…使いな」
「…」
「遠慮はいらない。この通りこっちには傘あるし…明日回収するからさ」
少女はちょっと笑って自分が持つ傘を傾けた。
こういう時は受け取るべきなのか―困惑していると向こうからもう1つの足音が。
「おい、急に走り出すなよ… 誰こいつ」
少女の友達らしき、走ってきた少年がチラッとこちらを見た。
「誰だか知らない…でもかわいそうでしょ? 傘ないし」
少女はなぜか面白そうに笑った。
「まぁそうだな… てかお前、早く帰らないと親にまた怒られるぞ?」
「はいはい分かってます~ それじゃあね、ちゃんとそれ回収するから」
少女はこっちに傘をやや強引に押し付けると、向こうへと歩き出した。
「あ、おめ…じゃ、気を付けて…」
少年はこちらにちょっと会釈してから少女を追いかけた。
あの2人にも、自分と同じような匂いがした。

  • ゲリラお題
  • 意味深? そうかもね…(そのうち分かるかもね)
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  • これって、「ハブアウィル」の黎/サイレントレイヴンの過去話ですか?

  • レスありがとうございます。
    う、うぐ…:(;゙゚''ω゚''):(この顔文字はまさにこのレスを見たときの作者の表情)まぁなんと察しが良い…(口調変だけど気にしないでください) 実際のところはどうでしょう(笑) 詳しくはおいおい語りますから、首を長くして待ってくださいね…

  • ご参加ありがとうございます、fLactorです。

    物語調。これはもしや、と思ってレスを開いてみたら……。とまあそんな感じでした^^
    滅多にレスする機会ないのでここで返しときますね。いまテトモンさんが連載してるやつの感想です。僕は一介の高校生だけあって異能力系とかめっちゃ好きなんですよ。なので毎回楽しく見させてもらってます。僕もこの掲示板で一応小説もどき書いている身なのですが、頻度があまり高くなくて……。コンスタントにあげられる人はそれだけで尊敬します。途中で詰ることもあると思いますが(現にそういう人たくさんいるし)、たとえどれだけかかっても最後まで完結させてください。応援してます。

  • レスありがとうございます。
    あぁ…やっぱり勘付かれたんですね。まぁ勘のいい人が見たら気づくかもな~と思って書き込みましたが…結構気づかれましたね(笑) 応援メッセージありがとうございます。これから先、多分折れそうになることがきっとあるでしょうけど、無理せず頑張っていきたいです。今日も書き込みます。