0

硝子のプレゼント#3

卒業式当日。
何も言えないまま最後のホームルームが終わりみんな泣いている。でも今はそんな余裕はない。だってこの後告白すると決めたんだから。
「ほーら、行っておいで!頑張って!」
「う…うん、が、頑張るよ…」
「ちゃんと笑ってよね!1度しかないチャンスなんだから!」
「分かったから…また後でね」
「いい報告待ってるよー!」
優樹菜と別れた私は彼の方へ近づく。
「……あの…」
「あ、俺?ちょっと外で話そ」
「え?」
彼に連れられてきたのは校庭の桜の下。今年は咲くのが早くてもう所々に花が見える。
「あの!」
「ん?」
「わ、私…話したことないけどずっと好きでした…あ、いや、好きです…で、出来ればこれ受け取ってください!」
私は彼に硝子のプレゼントを押し付けた。
「あ、ありがとな。俺さ、実はお前のこと好きなんだ。」
「ふぇ?」
あまりに予想外の出来事に変な声が出てしまう。
「だから、俺はあなたのことが好きです。」
「えっと…ありがとうございます」
「そんなかしこまって…でも君らしいなその返事」
「そ、そうですか…」
「そこがかわいいんだよな」
「か、かわいいなんてそんな私に似合わな…」
「かわいいよ。とっても。話したことなくても好きになるぐらいに。」
「な、なんか…ありがとう…ございます…あ!連絡先…交換しませんか?」
「うん、もちろん。」
スマホを取り出しLINEを開く。LINEを追加してるのは家族と仲のいい3人ほど。そこに父親以外の男の人の名前が並ぶのは不思議な感じがする。
「多分知らないだろうけど俺、大学遠いから4年間は一人暮らしするんだよ。」
「そっか…じゃあしばらくは会えない…」
「まぁ、そうなるわな…でも休みの時はすぐ戻るし、そのためのLINEなんじゃん。毎日でも話そうよ。」
「そ、そうですね…毎日…」
「べ、別に無理はしなくていいからな。返信待つことぐらい出来るよ。好きな人のためならね」
「私あまり喋れなくて…それでもいいですか?」
「もちろん。」
「…付き合ってくれますか?」
「はい。よろしくね。」
ちゃんとした答えを聞いた瞬間泣いてしまった。ちゃんと思いを伝えられた安心感と片想いではなく両想いだったことへの嬉しさと彼としばらく会えない寂しさがごちゃごちゃになって涙が止まらなかった。

  • 始まりと終わりで紡ぐ物語
  • 硝子のプレゼント
レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。