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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 3.セイレーン ①

寿々谷市で一番栄えている所は?と聞くと、多くの人が「寿々谷駅前」と答えるぐらい、寿々谷駅前は栄えている。
市内に1つしかない鉄道路線が通り、駅前には大きなバスロータリーがある。
近くには市内で一番大きいらしいアーケード商店街があり、学生たちのたまり場、ショッピングモールもある。
他にも病院、市役所など、様々なものがあり―市の中心部、という言葉が相応しい場所だ。
わたしは、駅自体を使うことは少ないけれど、ショッピングモールや塾へ行くために、よく近くまで行く。
だが今週は、ショッピングモールに行こうとは思えなかった。―なぜなら、”彼ら”に出会ってしまうかもしれないと思うからだ。
一緒にいて、とにかく楽しかった”彼ら”。友達がほとんどいないような状態だから、友達になれると思ったのに、―なのに。
―”異能力”にまつわる物事に、常人は下手に関わっちゃいけない―
手を伸ばせば届きそうなのに、”彼ら”は自ら離れて行ってしまった。
もしかするとわたしは”誰かと一緒”は無理なのかもしれない、そう思った。
でもさすがに独りは嫌だった―が、かと言ってまた”彼ら”に会いに行くと、嫌がられそうな気がする。
学生が多く集まるショッピングモールに行って鉢合わせたら、ものすごく気まずくなりそうな気がして、今週は行こうとは思わなかった。

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