「金属バットって、ふつう地面に刺さりますっけ?」
「普通じゃないから刺さったんだろうね」
「普通じゃないって……?」
「君ならもうその答えを知っているはずだ」
ええ、まあ、はい。恐らくその答えであろうものと似ているであろうものが僕の中にもありますからね。
「これ、どこから飛んできたんでしょうか」
「んー、ここから約40m先、あの男が投げたやつだね」
そう言って青年が指差した先には、件の不良の一人がすごい剣幕で居りました。
「あれ、知り合いかい?『あの野郎カツアゲ成功率100%の俺の顔によくも泥塗りやがったな。ブッ殺してやる!』みたいな顔してるぜ。奴との距離残り約20m。逃げるなら早くしな」
青年がそう言うので、僕は『およげ!たいやきくん』を発動し、全力で逃走を開始した。
それから五分後、件の不良は意外と足が速かったのか、まだ追いかけてきていた。
(おいおい、嘘だろ……。僕、結構なスピードで逃げてるんだぜ。何で追いつけるんだ?まさか僕の力みたいに、『追跡が上手くなる能力』でもあるってのか?けどそれだとバットの謎が解けないしな)
「やあ少年。苦労してるね?」
あの怪しげな青年がまた現れた。自転車に乗ってやがる。
「ええ…。どうしましょうこれ」
「君さ、『空気』って見えるか?」
「はあ?」
「だからー、空気だよ。約八割は窒素でできてて約二割が酸素、残った1%にも満たない中に色々入ってるあれさ」
「見えるわけ無いでしょう」
「そうだろう?……だから良いんじゃあないか」
「…へ?」