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LOST MEMORIES 427

 町から少しはずれたカフェ。カフェというと『Dandelion』一択だった瑛瑠は、新鮮な気持ちだった。
 落ち着いたBGMに望の声が乗って届く。
「まだ気まずくなるかも、なんて思ってる?」
 アイスティーの氷がとける。
 からんというあたたかい音を端で聴きながら、瑛瑠はゆるく首を振った。
「もう、平気です。私たちの間には、信頼関係がありますから。」
 微笑む瑛瑠に、望も返す。
「じゃあこれからは、男として見てもらえるように頑張るよ。」
「そういうところですよ、望さん。」
 レモンの香りが漂う。
 瑛瑠は、レモンティーを手にした。白い湯気が淡く消える。
 ふっと訪れた静寂。
「望さんは、素敵な方ですね。」
 レモンティーを置いた瑛瑠は、不意にそんなことが口をついて出た。

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