「梢…?」 不安になって名前を呼ぶ。泣いてるのかと思った。 「大丈夫。ちょっとね、嬉しかったんだ。こうやって笑えたのが。私…。…ずっとひとりぼっちだったから。」 今日初めて話したばかりの僕が踏み込んでいい話じゃないと思った。今まで僕に背を向けていた梢が振り返ってふわっと微笑んだ。 「ありがとう。」 びゅうっと強い風が吹いて梢の黒い髪を揺らした。 「んー…」 僕は大した返事もできずにいた。ただただ美しいと思った。夏の日差しがいつもよりも眩しかった。