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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 3.セイレーン ③

こんな、ところにも? こんな風に…ここにも?
そう思った時、”彼女”の言葉が脳裏をよぎった。
―この街、異能力者多いもん…
”彼女”の言う通り、この街は異能力者が多いのかもしれない。
いつの間にか路上アーティストの周りには、さっきよりも少しだけ、人が増えていた。
”彼ら”と同じ”異能力者”かもしれないと思うと、自然とその人に興味がわいた。
だから、その人のライブが終わってから、周りの聴衆がいなくなるのを見計らって、話しかけてみることにした。
もちろん、ただの見間違いだったらと思うと、話しかけるのは怖かったけど。
でも無性に気になったから、その人がギターなんかを片付け始めた時に、そっと近づいて話しかけた。
「あの…」
ん?とその人は片付けの手を止めてわたしを見た。
「さっき…目…光ってました…よね…?」
その女の人は暫くの間、わたしの目を見ながら考えていたが、不意に顔を上げ、帽子をくいとちょっと上げてから笑った。
「…キミ、面白いねぇ」
その人の目がまたほんの一瞬だけ、鮮やかな紫色に光った。
 

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