青年は立ち止まって不良の方に向き直った。
「あなたに何ができるっていうんですか。心を読む程度じゃあんなの止められませんよ!」
「君は一つ勘違いをしているぜ。僕の能力は『心を読む能力』じゃあない。……さあ、もう心配は無いよ」
不良を見ると、走る軌道が少しだけ右に寄っていた。そして僕らと5mほど間を開けて停止した。
「いったいどうしたんだ…?」
「君は『逃げる能力』を使う時、頭に何かしらの童謡が流れるだろ?僕もそうなんだよ。僕の頭に流れる曲は、『北風小僧の寒太郎』。その能力は『普通なら見えないものを可視化する』ってものでね。今はやつに対して空気を可視化してるんだよ。霧みたいに真っ白なのか、はたまた真っ暗なのか、もしかしたら緑や黄色や紫かも知れない。とにかく彼には見えてるんだ。そのせいで僕らの位置がつかめないでいる」
そして彼は、銃のような形状の物を取り出した。
「それは?」
「僕の七つ道具の一つ、発射式スタンガンだよ。さっきここには何も無かっただろ?その過去を可視化すると…ほら、見えなくなる」
そう言ってスタンガン(既に見えていない)を不良に向けて撃った(そんな素振りをした、と言った方が主観的には正確かな)。あわれ不良は、訳も分からず気絶してしまった。
「あとは七つ道具の一つ、特製ロープで縛って…はいできた」
「おお………。いともたやすく行われるえげつない行為……」