「その二足買った人、すげー興味あるわ」
「ところでお客様、どんなものをおさがしで?」
「ここにある靴じゃないことはたしかだね」
「こちらのハイヒールいかがですか? 彼女へのプレゼントに」
「あいにく彼女はいないんだ。いたとしてもサイズが合わなきゃどうしようもない。それじゃ」
出て行こうとすると、若い女が入ってきた。俺好みの、細面の美人だった。
俺は振り返ってたずねた。
「そのハイヒール、いくら?」
「八〇万円です」
「八〇〇〇円しかない」
「八〇〇〇円でいいです」
俺はハイヒールを持ち、女に近づいた。
「よかったらこの靴、履いてみませんか?」
女は躊躇なく椅子に腰かけ、ハイヒールを履いた。俺は女にきいた。
「サイズは?」
「ぴったりです」
女と俺は見つめ合った。言葉は必要なかった。俺は女の手をとり立ち上がらせ、腰に手をまわし、店を出た。