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手を繋いで帰ろうか 1

幸せなんて儚いものだ。案外脆くて壊れやすい。
そしてそれがいつ終わるか誰も予想出来ない。
例えば大切な人が事故にあってしまって
自分のことだけ忘れてしまう、とか。

「君は誰…?」
『…何言ってるの?葵。葵だよ…?』
「ごめん、僕達どこかであったことあるかな」

神様は不公平だ。私と蒼空は世間一般的に言う“恋人同士”の関係だった。
私の隣には蒼空、蒼空の隣には私。そんなどこにでもあるようでここだけの幸せだったと思う。もう過去形になってしまったけど。



[蒼空が帰り道に事故にあった]
そう聞いた時は心配で心配で蒼空がいる病院まで
ひたすら走った。命に別状がなかったと聞いた時はどれほど安心したことか。
蒼空の病室に入った時堪らずに涙が零れた。
本当に良かったと泣くことしか出来なかった。
それなのに

“君は誰…?”

まるで初めて会うような蒼空の言葉に視界は暗くなった。だけど頭の中は真っ白で。
変わらないのは蒼空の綺麗な瞳だけだった。

  • 手を繋いで帰ろうか
  • キセ
  • 蒼空→そら 葵→あおい
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