泣いちゃダメだ。泣いたら蒼空が私を忘れたことを認めたことになる気がする。
でも、もういいかなぁ。
スマホをぎゅっと握りしめコンクリートに膝をつく。蒼空、蒼空と声を上げて泣いてしまう。
蒼空が私のことを思い出さなくても、これからもずっとずっと私は蒼空のことが好きだ。蒼空の声も仕草も匂いも全部全部大好き。
でも私だけが好きだなんて寂しいんだって。
伝わるはずもないけれど、悲しい気持ちは募るばかりだった。するといきなり私の視界に誰かが手を差し伸べるのが見えた。
「膝、怪我してるじゃん」
聞きなれた声に上を向く。
『蒼空……?』
そこには蒼空がいた。なんでこんな時に。
蒼空は本当にずるい。私が辛い時にいつも現れるんだから。
「ほら、手貸すから。
女の子でしょ、怪我跡残ったらどうすんの」
『……ありがとう』
蒼空の声に1滴1滴と涙が零れてしまう。
「葵、泣かないでよ」
『そうだよね、ごめん…ごめんね』
そう言う彼の手には私とのツーショット写真が映ったスマホが握られていた。