0

手を繋いで帰ろうか 3

泣いちゃダメだ。泣いたら蒼空が私を忘れたことを認めたことになる気がする。


でも、もういいかなぁ。


スマホをぎゅっと握りしめコンクリートに膝をつく。蒼空、蒼空と声を上げて泣いてしまう。
蒼空が私のことを思い出さなくても、これからもずっとずっと私は蒼空のことが好きだ。蒼空の声も仕草も匂いも全部全部大好き。
でも私だけが好きだなんて寂しいんだって。
伝わるはずもないけれど、悲しい気持ちは募るばかりだった。するといきなり私の視界に誰かが手を差し伸べるのが見えた。


「膝、怪我してるじゃん」


聞きなれた声に上を向く。

『蒼空……?』

そこには蒼空がいた。なんでこんな時に。
蒼空は本当にずるい。私が辛い時にいつも現れるんだから。

「ほら、手貸すから。
女の子でしょ、怪我跡残ったらどうすんの」

『……ありがとう』

蒼空の声に1滴1滴と涙が零れてしまう。

「葵、泣かないでよ」
『そうだよね、ごめん…ごめんね』

そう言う彼の手には私とのツーショット写真が映ったスマホが握られていた。

  • 手を繋いで帰ろうか3
  • ここまで読んでくれてありがとうございました
  • キセ
レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。