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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 3.セイレーン ⑤

ひとまず会話が落ち着いたところで、わたしはふと、さっきのことを思い出した。
「そういえば…さっき、能力発動してましたよね?」
「うん、そうだけど」
さっきわたしが見たのは、ただの見間違いではなかったと分かって、ちょっと安心した。
「あなたの能力って…『周りの人の視線を集める』能力?」
「ん~、ちょっと違うね。アタシの、ていうかアレは”セイレーン”っていうんだけど、『周りの人の意識を集める』って言うのが正しいかな」
その人は、水の入ったペットボトルのフタを開けながら続ける。
「あ、あと、アタシの名前は船戸 セレンって言うんだ。キミは?」
「え、わたし?」
思わず聞き返すと、船戸さんはそう、とうなずいた。
「…不見崎 清花(みずさき さやか)っていいます」
「へーいい名前じゃん」
船戸さんはニコッと笑った。
「…そうだ、船戸さんってさ」
「セレンでいいよ、苗字じゃなんかかしこまりすぎ」
そう言ってセレンさんは、ペットボトルに口を付けた。
「…寿々谷の人?」
わたしの言葉を聞いて、セレンさんは軽くむせった。

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